溶連菌感染症になると、抗生物質を確実に服用するよう指示され、服用後は尿検査を受けるよう指示されます。
その理由は、溶連菌感染症には続発症(急性糸球体腎炎)があるからです。
溶連菌感染症になったら知っておきたい、急性糸球体腎炎の症状や対策、治療についてまとめました。
目次
溶連菌感染症とは?
溶連菌感染症とは、溶血性連鎖球菌に感染することにより発症する病気で、寒い時期に保育園や幼稚園などで流行することがあります。
のどの痛みや38~39度の発熱があり、感染力も強いため、もし感染がわかったら登園は控え、家族への感染にも注意する必要があります。
溶連菌感染症の症状
溶連菌感染症の症状は、風邪の症状に似ていますが、体に小さな赤い発疹が出たり、舌がいちごの表面のようになる(いちご舌)など、風邪とは異なる症状もあるので、見逃さないようにしましょう。
ただ、そういった症状の有無だけで溶連菌感染症か見分けるのは危険で、きちんと医療機関で検査を受ける必要があります。
溶連菌感染症を見落として、きちんと治療を受けないと、重い続発症(急性糸球体腎炎)にかかることもあるので、のどの痛みや発熱がある場合、念のため医療機関を受診するようにしましょう。
溶連菌感染症と急性糸球体腎炎の関係
溶連菌感染症と診断されると、抗生物質を処方されます。抗生物質の種類にもよりますが、1週間から10日程度の服用を指示されます。
服用後には、2度の尿検査を受けるよう指示されることもあります。
その理由は、溶連菌を完全に退治しなければ、急性糸球体腎炎と呼ばれる重篤な続発症を発症する可能性があるからです。
急性糸球体腎炎とは?
急性糸球体腎炎とは、4歳~10歳のこどもに多く発症する腎炎で、そのほとんどが溶連菌感染症の続発症です。
発症のメカニズムは詳しく解明されていませんが、溶連菌に感染したことで作られた抗体と菌体成分が結合した「免疫複合体」が血液により腎臓の糸球体に運ばれ、そのことにより糸球体に炎症が起こると言われています。
急性糸球体腎炎の症状
急性糸球体腎炎になると、溶連菌に感染して2~4週間後に以下のような症状が出現します。
- 尿の泡立ち(たんぱく尿)
- 黒っぽい尿(血尿・色の変化がない場合もあります)
- 尿量の減少
- 浮腫(むくみ)による体重増加
- 高血圧による頭痛や嘔吐
- けいれん
これらの内、たんぱく尿や血尿は尿検査によりすぐ診断できるため、溶連菌感染症後の尿検査は、急性糸球体腎炎の早期発見につながり、とても重要な検査ということになります。
急性糸球体腎炎は、完治できる病気ではありますが、1ヶ月程度の入院、12ヶ月程度の経過観察などが必要になります。
長期間にわたる通院は、お子さまにとっても、保護者にとっても負担が大きいので、できるだけ急性糸球体腎炎にならないよう、気をつけたいものです。
急性糸球体腎炎の治療法
急性糸球体腎炎になると、水分や塩分、たんぱく質を制限する食事療法や、保温、安静などの保存的治療を行います。
併せて、抗生物質や利尿剤、降圧剤などの、症状に合わせた薬の服用を行い、1週間程度での尿量の改善を目指します。尿量の改善が見られたら、少しずつ食事制限を緩めていきます。
しかし、血尿は6ヶ月以上続くこともあるため、退院後も1年間程度は経過観察を行わなければなりません。また、ごくまれに腎不全や高血圧脳症、心不全などを併発することもあるため、注意しなければなりません。
急性糸球体腎炎の対策
急性糸球体腎炎にならないためには、溶連菌感染症にかかった際に処方された抗生物質を、きちんと服用することが最も大切です。
抗生物質を指示された通り、全て服用したお子さまが、急性糸球体腎炎になることはほぼないと言われているので、処方された抗生物質は、症状が軽くなっても必ず飲みきるようにしましょう。
また、溶連菌感染症に早く気づいてあげることも大切です。溶連菌感染症が流行する冬は、風邪をひきやすい季節でもあります。
もしお子さまが「のどが痛い」と訴えた場合は、熱が低くても、念のために医療機関を受診するようにしましょう。
子供が抗生物質の服用をイヤがるときは?
溶連菌感染症になった場合、抗生物質を確実に服用することが大切ですが、薬が苦手なお子さまも多いです。
しかし、最近の抗生物質は、こどもでも飲みやすいように様々な工夫がされています。特に抗生物質の原末は苦いため、コーラ味やフルーツ味、バニラ味など、こどもが飲みやすい味に加工されているものがほとんどです。
ただ、薬が苦手なお子さまは、薬を口に入れること自体を嫌がることもあります。そういった場合は、アイスクリームやジュース、プリンなどに混ぜると、飲ませやすくなるので試してみてください。
抗生物質ごとに味の相性が良い食品が異なるので、どんな食品がおすすめか、薬剤師に相談してみましょう。他にも、薬の服用を楽にすることに特化した服用ゼリーなども販売されているので、そういったものを利用するのもおすすめです。
感染症予防も確実に!
溶連菌感染症になった際、抗生物質を確実に飲むことで、急性腎糸球体腎炎にかかるリスクは格段に低くなります。
更に言えば、溶連菌感染症にかからなければ、急性腎糸球体腎炎にかかることはありません。冬は溶連菌感染症以外にもインフルエンザや嘔吐下痢症など、さまざまな感染症が流行します。
まずはうがい手洗いを徹底し、十分な休息を取るなど免疫力が低下しないよう注意し、感染症予防に努めることも忘れないようにしましょう。