血液検査では、好中球の数値を調べることができます。好中球の基準値は40~70%(白血球百分率)で、好中球は多くても少なくても治療が必要になります。
ここでは、好中球が基準値よりも少なかった場合に考えられる原因や疾患、また、好中球が少なくなった時に摂ってはいけない食品などについてご紹介しています。
好中球とは?
好中球とは白血球の1つで、アメーバのように動くという特徴を持ちます。
好中球は、外部から侵入してきた異物を取り込む貪食能を持ち、ウイルスより細菌や真菌に対する貪食能が高く、殺菌をするのが主だった役割です。
白血球に最も多く含まれているほか、骨髄にも蓄えられており、私たちの健康維持に大きく関わっています。
好中球減少症とは?
好中球が基準値より少なくなった状態を総称して「好中球減少症」と呼びます。
さまざまな疾患が原因で好中球減少症を患うため、好中球が少ないことがわかったら、まずは原因を突き止めなければなりません。
一般的に、骨髄検査や血液培養等の検査を行い、原因を特定します。
好中球減少症の原因
何らかの疾患によりリンパ球・好酸球・好塩基球・単球が増えると、好中球は相対的に減っていき、好中球減少症になります。
好中球減少症には、先天性のものと、疾患などが原因となる外因性のものがあります。
その2つには、それぞれ原因となり得る疾患があり、まだ完全に解明されていない部分もありますが、わかっている中で比較的症例が多いものは以下の疾患です。
- 先天性好中球減少症(遺伝性疾患)
- 周期性好中球減少症(遺伝性疾患)
外因性の好中球減少症の原因
- 薬剤の副作用
- 白血病やリンパ腫、骨髄腫などのがんや骨髄線維症
- 細菌感染症や麻疹・風疹、HIV感染症
- 溶血性貧血などの血液疾患
- 肝硬変などの脾機能亢進症
好中球減少症の症状
好中球減少症の症状は、重症度や原因となっている疾患によって変わります。主だった症状は以下の通りです。
外因性の好中球減少症の場合
外因性の好中球減少症の場合は、感染症の症状が現れるまでは無症状なため、好中球減少症になっていることに気づくことはできません。
また、軽度の場合は発熱だけが症状として現れることも多く、気づかないうちに治っていることもあります。
ただ、外因的な好中球減少症の場合でも重度になると、リンパ節の腫れや肺炎などになることもあるため、必ず検査を受けることが大切です。
先天性好中球減少症の場合
先天性好中球減少症の場合は、発熱を繰り返したり、口内炎や口腔内潰瘍、咽頭炎、皮膚感染症、リンパ節肥大などになることがあります。
また、更に症状が進むと、肺炎や敗血症になることもあります。
好中球減少症の際の食事
好中球減少症になるということは、細菌や真菌を攻撃する白血球が体内に少ないということです。
つまり、感染症に罹りやすい状態になっているので、食事には十分注意を払わなければなりません。重症度にもよりますが、多くの患者は以下のような指導を受けています。
- 魚や肉、卵を生で食べない
- 野菜、果物もできるだけ生で食べない
また、上記の食品を生で食べないことに加えて、その他の食品でも口に入れるまでの衛生管理が大変重要になります。
食べ物は調理の前によく洗う、調理器具や食器は清潔にするなど、健康な時よりも更に念入りに清潔を心がけなければなりません。
好中球減少症の治療法
好中球減少症の治療は、重症度や症状によっていくつかの方法があります。
感染症治療および対策
重症度にもよりますが、好中球減少症と診断されても経過観察になる場合も多くあります。
特に、インフルエンザなどの感染症によって好中球が減少した場合は、感染症の改善と共に次第に好中球も増え正常値に戻るため、経過観察と言われることが多いようです。
同様に、その他の感染症でも、感染症が治れば好中球の数値も戻ることが多いため、抗菌剤や抗生剤、イソジンなどのうがい薬を処方され、まずは感染症を治し、同時に予防するよう指導されることが多いです。
薬剤の服用を中止
薬剤が原因の場合は、原因とされる薬剤の服用を中止し、経過観察をすることになります。
好中球増殖作用がある薬剤の投与
先天性好中球減少症に利用される治療法で、好中球を増やす作用を持つ顆粒球コロニー刺激因子製剤(G-CSF)を投与することで、好中球を正常値に戻すという方法があります。
造血幹細胞移植
先天性好中球減少症に有効な治療法で、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与をしても好中球が増えず、重い感染症を繰り返す時や、骨髄異形成症候群(MDS)を発症した場合に、根治療法として造血幹細胞移植を行うことがあります。
好中球減少症になったら感染症を徹底的に予防する!
好中球減少症になってしまうと、自分で治すことはできません。しかし、好中球減少症を患っている間、他の感染症から身を守ることで、症状の悪化を防ぐことはできます。
血液検査の結果をもらってから、好中球減少症の原因が判明するまでの間にも感染症対策は怠らないようにしましょう。
担当医により基準は多少異なりますが、好中球の数値が1000/μlになるまで、感染症への対策は継続して行う必要がありますので、自己判断で対策をやめないことも大切です。