好塩基球の数値が高いとどうなる?増加の原因とアレルギーとの関係

好塩基球

好塩基球は血液中にごくわずかだけ含まれる白血球の1つです。

好塩基球については、まだまだ解明されていないことも多く、現在でもその機能を明らかにするために研究が続けられています。

ここでは、今現在わかっている好塩基球が増加する原因や、数値が高いことで疑われる疾患、また、好塩基球とアレルギーとの関係についてご紹介します。

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好塩基球とは?

好塩基球
白血球の中の顆粒球の1つである好塩基球は、ウサギ以外の動物にはごくわずかしか含まれていません。

好塩基球の顆粒には、ヒスタミンやセロトニン、ヘパリン、糖たんぱく質が含まれており「ヒスタミンを放出することによりアレルギー反応が引き起こされている」と以前から言われていました。

ただ、好塩基球は未だに謎の多い細胞で、長い間どんな働きがあるのかはっきりしていませんでした。

しかし、近年ではアレルギー反応やアナフィラキシーショック、寄生虫感染症との関係性のメカニズムが解明されるなど、少しずつではありますが、その働きが明らかになってきました。

好塩基球が増加する原因

好塩基球が増加する原因
好塩基球は健康な人の場合、血液1μl中0~300個(約0~3%)と、ごくわずかしか含まれていませんが、好塩基球の数が正常値より多い場合、以下の様な疾患が原因となっている可能性があります。

  • アレルギー疾患
  • 骨髄増殖性疾患
  • 潰瘍性大腸炎
  • 甲状腺機能低下症

しかし、なぜこれらの疾患で好塩基球が増加するのか、そのメカニズムは残念ながらあまり解明されていません。

ただ、2011年に、アトピー患者の患部などに存在するたんぱく質「TSLP」が、骨髄にある造血系幹細胞の好塩基球への分化を促していることが発表されるなど、少しずつですが好塩基球が増加する仕組みが明らかになってきています。

好塩基球とアレルギーの関係

アレルギー
好塩基球はアレルギー疾患に大きく関わっていることは以前からわかっていましたが、近年、そのメカニズムが少しずつ明らかになってきています。

そのことにより、アレルギー疾患の新しい治療法の確立が期待されています。

好塩基球によるアレルギーのメカニズム

2017年、好塩基球がアレルギー疾患を引き起こす引き金になっていることがはっきりしました。そのメカニズムをご紹介します。

  1. 好塩基球が樹状細胞(抗原提示細胞として機能する免疫細胞の一種)の表面にあるMHCクラスⅡ分子(免疫反応に関与するたんぱく質)とアレルゲン分子を自身に引き寄せる。
  2. その後、好塩基球は自ら作り出した「インターロイキン4(造血などに関与するたんぱく質)」「MHCクラスⅡ分子」「アレルゲン分子」の3種類をナイーブT細胞(リンパ球の一種で、抗原刺激をまだ受けていないT細胞)に渡す。
  3. 好塩基球からインターロイキン4等を受け取ることにより、ナイーブT細胞はTh2細胞(花粉やハウスダストアレルギーを引き起こす細胞)へ変化し、アレルギー反応が起こる。

このように、好塩基球は「細菌やウイルスではない物質に対するアレルギー反応」の始点に大きく関わっているのです。

好塩基球はアレルギー性疾患を増悪させる

花粉症やアレルギー性皮膚炎などのアレルギー疾患は、一度発症すると、徐々に増悪していくことが多いです。そこにも、好塩基球が大きく関わっていることがわかりました。

  1. アレルゲン分子を認識すると、好塩基球の働きによりTh2細胞(花粉やハウスダストアレルギーを引き起こす細胞)が作られる。
  2. 以後、好塩基球はほんのわずかなアレルゲン分子にも反応するようになり、更に効率よく働くようにもなるため、Th2細胞が作られる量が増え、アレルギー反応を増悪させる。

その後も同様の反応が繰り返されることにより、アレルギー症状はどんどん悪化していってしまいます。

好塩基球はアナフィラキシーショックを誘導する

免疫グロブリンGが関与する全身性アナフィラキシーに、好塩基球が大きく関わっていることが判明しました。

詳細なメカニズムは分かっていませんが、アナフィラキシーショックは死に至ることもあるため、その原因究明が急がれています。

好塩基球と寄生虫感染の関係

好塩基球と寄生虫感染
好塩基球はアレルギー性疾患を引き起こすなど、あまり良いイメージがありませんが、一方で、寄生虫感染に対する免疫を獲得するのに役立つ可能性もあると言われています。

マダニは動物や人に寄生し吸血し、その際に病気を媒介します。1度マダニに寄生されると、その後も繰り返し吸血されるため、日本でもペットを飼っている家庭にとっては重大な問題となっています。

しかし、マウスやモルモットにはマダニに対する免疫ができていることがわかりました。マウスやモルモットにマダニが寄生しようとすると、そこに大量の好塩基球が集まって、吸血を阻止していたのです。

このことから、好塩基球は寄生虫感染に有効な細胞であることがわかり、医療に応用できないか研究が進んでいます。

好塩基球の数値が気になったら病院へ

好塩基球については解明されていない部分が多いため、好塩基球の数値を減らすために私たちが個人できることはありません。

そのため、好塩基球の数値が高く、まだアレルギー疾患等で病院にかかった事のない方は、病院に行って原因となっている疾患を明らかにすることが大切です。

疾患等への新しいアプローチ方法や、直接、好塩基球の量を減らす治療法などが確立される可能性もあるので、今後の研究に期待したいですね。

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